教育学部1年 寺西千紗瑛さん

派遣先:千葉盲ろう者友の会

Q あなたが活動に参加した団体について教えてください。どのような地域課題に取り組む団体で、またどのような活動を行っていますか。

私が活動に参加したのは千葉盲ろう者友の会という団体です。この団体は千葉県内の盲ろう者の自立と社会参加を目指し、2004年に発足しました。2009年にNPO法人化し、千葉県からも県内に住む盲ろう者へ対しての通訳介助者の派遣事業や、毎年盲ろう者対応の通訳介助者の養成講座を行うことを任されています。

見ることと聞くこと、その両方に障害を持つ盲ろう者は社会的にも認知度が低く、まだ正式な通訳や介助方法も決まっていません。そのような中、この団体では盲ろう者のニーズに応えるためにより良い方法を模索しながら活動に取り組んでいます。

千葉盲ろう者友の会>>

Q 実際にあなたが参加したのはどんな活動ですか。

私は毎月一回行われる盲ろう者の交流会や交流会を行うにあたっての事前会議への参加、指点字や手話勉強会への参加、盲ろう者の方の一泊旅行への同行、クリスマス会などの季節のイベントに参加しました。

Q 活動に参加する前に設定した目標について教えてください。地域活動に参加するにあたり、地域・人々にどんな貢献をしたいと考えましたか。また体験を通じて何を学び、どんな点で成長したいと考えましたか。

私はいま手話を学んでいるのですが、その手話を活かして盲ろう者のコミュニケーションの手助けとなりたいと考えました。それに加え通訳介助者として活動している人たちにその仕事のやりがいや仕事を始めたきっかけはなにかについて聞き、自分の向上につなげたいと考えていました。また体験を通じて、今まで知らなかった盲ろう者についての理解を深め、自分に出来ることはないかを考えるきっかけになるのではないかと思い参加を希望した。

Q それらの目標はどの程度達成できましたか。

始める前は、活動に参加すればすぐに通訳することができて、盲ろう者の助けになれるのではないかと思っていました。実際はそう簡単なことではないことを痛感しました。

自分自身まだまだ未熟で、盲ろう者のコミュニケーションの手助けが十分に行えませんでした。50%くらいかなと思います。「盲ろう者のコミュニケーションの手助けをしたい」という目標は今後も持ち続け、これからは一人前の通訳介助者として盲ろう者への情報保障が出来るよう質の高い通訳を目指していきたいと考えています。

「通訳介助者の方への聞き取り」に関する目標は、積極的に通訳介助者の方にお話しを伺い、様々な人から仕事のやりがいや仕事を始めたきっかけなどを聞くことができました。なので達成度は90%でしょうか。ボランティア実習に行ったことで多くの人と知り合い、以前と比べて自分より目上の方と話す機会がかなり増えたことも自分にとって大きな収穫でした。

Q 今回の地域活動体験の中で、最高/最低な体験をそれぞれ教えてください。また、その体験から何を学びましたか。

活動の中で最高だと感じたのは、実習最後のイベントのクリスマス会です。その日は会場準備や打ち合わせの参加などが主な仕事だったのですが、会の最後の方にサプライズで盲ろう者の方から「今まで実習お疲れ様」と、手作りの粘土細工のマグネットをいただいたことがとても嬉しかったです。大変なことも多かったけれど、盲ろう者の方からお礼を言ってもらえた時、必要とされていることを実感するときがやりがいを感じて、これからも頑張ろうと思えました。

最低な体験は、特に思いつきません。しいていえば、ボランティアで参加しているにも関わらず、私が状況にすぐに対応できなかったことで余計に団体の方の仕事を増やしてしまったことに申し訳なく感じました。ですが回数を重ねることでこのようなことは減っていったので、失敗から学び次回は同じような間違いをしないことができたと思います。

Q あなたの地域活動(ボランティア活動、NPO等の団体の存在意義)に対する理解を教えてください。それは実習前とどんな点が変わりましたか。

実習前はNPOのイメージは会社のような堅いイメージでした。実際に私がお世話になったボランティア先の人たちはみんな親切で、私たち実習生を温かく迎えてくれました。NPOで活動すると地域の人と関わる機会が多いではと思っていましたが、千葉盲ろう者友の会では必ずしもそうではありませんでした。また、社会ではする必要があることがたくさんあるが、行政や企業だけでは補えない部分をNPOが担っていることを再認識しました。障害者が暮らしやすい社会にはまだまだ改善していく余地が多いこともが今回の実習で気づきました

Q 実習を終えてあなた自身、何か変りましたか。(あなた自身や他者、地域社会に対する評価、考え方、態度、行動など)

実習を終えて、盲ろうという視覚障害と聴覚障害を併せ持つ障害への理解が深まりました。一口に盲ろう者といっても人それぞれ障害の重さは異なり、その人に最も合った通訳手段があって、通訳介助者は盲ろう者ひとりひとりのニーズに対応した通訳介助をすることを心掛けることが必要だということがわかりました。

また「障害者だからお世話してあげるという気持ちではなく、あくまで通訳介助者は盲ろう者の目と耳の代わりを果たすのが努めであって、盲ろう者が自分で出来ることはしてもらう、盲ろう者主体の行動が出来るようサポートするという意識で通訳介助して下さい」と言われたのがとても印象に残っています。

今後は地域社会でも目が不自由な人がつく白杖を持っている人を見かけたら、手を差し伸べてあげられる人が増えることが望ましいと切に思うようになりました。障害者を差別するような言動をするような人が多くいて、実際に盲ろう者の方と一緒にエスカレーターを使っていたときに「邪魔だ」と言われ押されたこともありました。自分の都合だけを優先して、自分勝手な行動をする人がいたことにとても悲しくなりました。これから多くの人に盲ろうという二重の障害を抱えた人がいることを伝えたいと思います。自分が目も見えず、耳も聞こえなくなったときにどれだけ歩くことが不安になるか考え、障害について理解をしてほしいと思いました。

Q 今回の地域活動の体験に満足していますか。それはなぜですか。

満足しています。大学の授業でこのようなボランティアができると思ってなかったので、授業の存在を知ったときは受講することを即決しました。私自身もそうでしたが、学生の中にはボランティアをしてみたいと思っている人は多いと思います。自分で探すのをためらってしまったり、なかなか参加する勇気がでない学生も多いと思います。大学でボランティアに参加する機会を設けていることはとてもありがたかったです。

Q 今回の実習はボランティアとして行いました。このような活動を行うためには対価が必要ですか。必要であれば、どのような対価が得られれば他人に対してあなたの時間や労力を割いてもよいと思いますか。

私はこの実習を通して、一番の対価は盲ろう者の方から「ありがとう」と言ってもらえることだと実感しました。一泊旅行のボランティアはとても大変だったが、最後に一緒に旅行した盲ろう者の方から感謝の言葉を頂いたときにその疲労感は飛んで行ったくらい私には効果がありました。

現在、千葉盲ろう者友の会は千葉県から県に住む盲ろう者の通訳介助を派遣することを委託されています。そのため通訳介助者にはそれなりの自給の給料が出ているそうです。しかし仕事内容は盲ろう者の安全と情報保障を任されているのですから、求められる責任は時給以上だと思います。完全なボランティアでは盲ろう者も通訳介助者のお互いがだらけてしまう可能性もあり、金銭のやり取りが発生するからこそ責任感も芽生えてより良い関係を築けているのではないかとも感じました。

Q 地域活動での体験はこれからの大学での学びにどのように関連すると思いますか。また大学での学びは地域活動にどのように関連していますか。

私自身の体験は、直接は私が専攻する大学での授業には関連することは少ないかなと思いました。ですが将来公務員になりたいと考えているので、障害者も暮らしやすい地域にすることを目標とした地域づくりを行う際に今回の体験は役立つと思います。

一方で講義だけでは実際にわからなかったことが実際に社会で活動しているNPOの活動に参加し、現時点でそのNPOが抱えている問題(NPOの運営者の高齢化や資金不足など)の問題点も少し感じることができました。これからはNPOに対し、国や県がどのような支援をするべきかも視野に入れ考えていきたいと思います。

Q 今後はどんなことに取り組んでいきたいと思いますか。

実習としてのボランティアは終了しましたが、今後はこの団体の正式な会員となって通訳介助者として関わっていく予定です。
盲ろう者という耳も聞こえず、目も見えない両方の障害を併せ持つ人がいること、盲ろう者は社会から疎外されやすく、盲ろう者の目と耳の代わりとなる通訳介助者が盲ろう者の社会進出には必要不可欠です。まだまだ知られていない盲ろう者という存在を、これから多くの人に知ってもらい障害について理解してもらえるように情報発信もしていきたいです。盲ろう者も暮らしやすい社会になるよう、これからも千葉盲ろう者友の会の活動に参加していきたいです。

Q それでは最後に、来年度実習を行う後輩たちへ一言お願いします。

もし迷っているなら参加したほうが良いと思います。私にとっては自分のイメージしていたNPOの活動とはだいぶ異なっていましたが、参加してみなければわからないことばかりでした。
「盲ろう者友の会」に参加しようと考えている方がいたら、少しですがアドバイスもできると思います。