教育学部1年 細川恵美さん

派遣先:NPO法人 あすみが丘国際交流(AIFS)

Q あなたが活動に参加した団体について教えてください。どのような地域課題に取り組む団体で、またどのような活動を行っていますか。

AIFSは土気のまちに住む人たちによって運営されているNPO団体です。主に在日外国人との交流事業、海外文化等の紹介事業、地域住民との交流事業に取り組んでいます。

在日外国人との交流事業では、「くらしのにほんごくらぶ」での日本語指導・日本文化の学習を始めとする在日外国人支援や、双葉外語学校と連携して留学生参加の交流イベントをコーディネートします。これがメインの活動で、国際交流関連諸団体とも協力しています。
海外文化等の紹介事業として定期的に「世界のくらしシリーズ」と呼ばれる講座やイベントを開設していて、まちの皆さんの楽しみにもなっています。

また、地域住民との交流事業も重要な活動です。プラザまつりへの出店や、今年から始まった「あすみが丘こどもタウン」だけでなく、あすみが丘まち散策など多数の事業を通して地域住民と関わる機会を大切にしています。その他にも花いっぱい活動やニュースレターの発行など地域の環境保護や情報発信にも積極的です。

土気は比較的新しく、長年住んできたという人が少ないまちです。そして最近では高齢化も顕著であるといいます。そうした中で活気あるまちをめざしており、人と人とを結びつけるような事業に積極的でした。国際交流だけでなく多世代交流も実現しているという印象を受けました。まちに住む外国人の生活支援と同時に、まちに住む日本人の国際理解の場も支えています。

NPO法人あすみが丘国際交流>>

Q 実際にあなたが参加したのはどんな活動ですか。

私は本当に様々な活動に参加させていただいて、貴重な経験をさせていただきました。
主な活動としては4つ挙げられます。一つは駅前のフラワーポットへの水やりです。力仕事でしたし少し大変でしたが、一番ボランティアらしい活動だったかもしれません。

二つめに、双葉外語学校生のスクールビジット事業のお手伝いです。これはロシア方面からの短期留学生が、地元の土気高校を訪問し部活紹介を通して日本文化を体験しながら学ぶというプログラムでした。ここでは「同世代交流」も大きなテーマにしていたので、留学生や高校生たちが積極的に関われるようにアシストしたり、留学生が困った時にお手伝いしたりしました。

三つめに、あすみが丘こどもタウンです。土気駅前の商店街の中で、子どもたちが自分たちでお店を運営し、働いた給料で遊べるというイベントです。これは今回が第一回の取り組みで、企画段階から参加させてもらうことが出来ました。当日は双葉外語学校の留学生も協力してくれて、子どもたちと留学生の交流という点でも大きな意味があったと思います。

最後に、プラザ祭りへの出店です。たくさんのゲームコーナーやカレー・コーヒーショップを設置し、双葉外語学校の留学生とも一緒に頑張りました。まちの人がたくさん集まるイベントで、土気のまちの明るさを感じました。また、その他にも、今回の世界のくらしシリーズは「フランスの文化セミナー」でしたが、当日スタッフとして講師の方や参加者の皆さんのコーヒーブレイクの準備などをし、実際に講義にも参加させていただきました。

そして、大木戸小学校への出張授業のお手伝いもしました。この出張授業は、大木戸小学校の総合的な学習の時間で「国際理解」をテーマにしており、AIFSの「くらしのにほんごくらぶ」の生徒さん4名が自国の文化について小学校で発表しました。また、その後日、今度は小学生の皆さんから日本について紹介してもらう機会もあり、そこでは小学生と一緒に給食もいただきました。
このように、非常に様々な体験をさせていただき、たくさんの人と出会えました。

Q 活動に参加する前に設定した目標について教えてください。地域活動に参加するにあたり、地域・人々にどんな貢献をしたいと考えましたか。また体験を通じて何を学び、どんな点で成長したいと考えましたか。

国際交流については「留学生にもっと日本を好きになってもらえるように安全で楽しいイベントをつくる。そのために細やかな注意を向け、留学生のヘルプに俊敏な対応を心掛ける。」といった目標を、地域交流については「子どもたちが土気のまちで楽しい思い出をつくれるように、子どもたちの自主性を尊重し、協力していく姿勢を忘れない。また、地域の方々に対しても積極的に自分から声をかけていく。」という目標を設定しました。

また自分の成長としては、このような機会はなかなか得られないので、「まちの住人によるまちづくりの実践から自分なりにその課題を見つける。自分から行動し、地域の人とも積極的に関わる。そして、まちの人々が交流する場をより活発なものにしていく。」といった目標にしました。

Q それらの目標はどの程度達成できましたか。

目標の達成率は85%ほどです。イベントの終わりでは留学生や小学生の笑顔をたくさん見ることができ、たくさんの人に次も来たいと声をかけてもらいました。落し物やちょっとしたトラブルがあった時にも、比較的冷静に対応できたと思います。

しかしAIFSの方々や地域の皆さんがとても親切で常に声をかけて下さっていたので、自ら進んで動いたのは役割を指示された後くらいでした。全ての活動が初めてなので勝手に動かず、指示を仰いだことは間違いではなかったと思いますが、最後まで「お客様」として対応していただきましたし、自分自身も活動してしまった気がします。

Q 今回の地域活動体験の中で、最高/最低な体験をそれぞれ教えてください。また、その体験から何を学びましたか。

最高の体験はやはりスクールビジット事業です。

綿密な打ち合わせと計画があったからこその成功だとは思いますが、地域の教育機関を結びつけることの意義を感じました。高校生にとって自分自身の部活動を外国人留学生に紹介することは、自分がやってきたことを一度立ち止まって見つめ直し、その上で伝える努力をするきっかけになります。人に伝えるためには自分が理解してきたこと以上の理解がなければ足りません。そのような姿勢が外国人留学生たちにもまっすぐに伝わったのではないでしょうか。

また、留学生とはいっても日本人と実際に接する場面は限られてしまいます。そのため、こういう同世代交流の場は非常に貴重な機会だと思いました。地域における教育機関の意義は非常に大きいです。留学生支援の中で高校との連携を図ることで、地域に高校生を取り込みやすくもなりました。地域の中に高校生をひたすら呼び込むのではなく、違ったアプローチがあった方が高校生も参加しやすいのだなと思いました。

最悪の体験は、あすみが丘こどもタウンがあいにくの雨だったことです。商店街を利用していたので来場者の方々には寒い思いをさせてしまいました。子供たちは気にしなくても保護者の方は天候によって外出を躊躇してしまいがちです。おかげでホットコーヒーの売れ行きは良くなっていましたが、それだけでは不十分で、屋外でやる分11月とはいえ防寒対策はきっちりとしていかなくてはいけないなと思いました。

そして、待ち時間を減らす努力をしなければならないと思いました。特に私は受付・会計業務だったので、雨が降って寒い中で待たせてはいけない!ということだけを目標に色々と試行錯誤をしながらやりました。また、商店街の利用率が上がったのかは定かではありませんが、今度は商店街の活性化も課題に入れてやっていくとより賑やかになるのではないかとも思っています。「商店街を利用していて楽しそうだったから来てみた」という方もいたので、今度は「楽しそうだから来てみたけど、ついでに商店街でお買い物しよう」という人の動きも出てくると双方向に利益が生まれるのではないでしょうか。

Q あなたの地域活動(ボランティア活動、NPO等の団体の存在意義)に対する理解を教えてください。それは実習前とどんな点が変わりましたか。

まちづくりの本質的・実質的役割を果たしているのが、地域活動だと思います。行政が決められるのはあくまで大まかな枠組みの部分で、独自の視点を持つ地域活動がその細部に課題を見出し、取り組んでいるという印象を受けました。

基本的に地域活動は特定のテーマを持ち、それに沿った取り組みをするので、複数の団体が存在することでさまざまな課題設定が実現されます。行政のまちづくり政策が成功している例では、多くの場合、同時に地域活動が非常にさかんです。もちろん、地域活動がその自由を保障されているといっても無制限であるはずがなく、経済状況のために活動を制限せざるを得ないというケースも多いと思います。しかし、そうした状況があるからこそ、団体が創意工夫し、活動もより活発になるのかもしれません。

実習前は地域活動が余暇の延長にあり、漠然としたボランティア精神から生まれるものだと思っていましたが、実習を通して、自ら課題を設定し使命感を持って活動する会員の皆さんの様子に感動し、地域活動の自律性と主体性を感じました。

Q 実習を終えてあなた自身、何か変りましたか。(あなた自身や他者、地域社会に対する評価、考え方、態度、行動など)

非常に社交的になったというのが一番大きな変化です。本当に様々な年代の人、さらに言えば国籍もバックグラウンドも全く異なる人たちと接していく中で、初対面でも自分から話しかけていくことに抵抗が少なくなりました。

そして、積極的に話しかけていくことで、本当は手を貸してほしいのに言えない人やそもそも他人と話すのを嫌がる人もいるということに気づきました。この気づきによって、自分から働きかけるという意識を大前提におかなくてはならないと思うようになりました。

今までは、学校という身近なある程度仕上げられた社会集団の中で、人間関係を築き、役割を見つけてきたので「自分がなにをするべきか」を考える機会は少なかったのだと思います。そのため、初めは自分の立ち位置すらわからず、どうすれば正解なのかを念頭において探していました。そして周りの人たちも私に「正解」を求めているものだとも思っていました。どんな場面でも評価が前提であるかのように感じていたのです。

しかし、そんなことはなく自分の立ち位置は自分で決定し、自分にできることをやればいいのだと思うようになりました。周りの人々もいい意味で無関心で、私がやるべきことがある場合にはしっかり指示してくれます。指示を出さずに正しく動けるか、と試験しようとすることはめったにありません。そう考えると、自分から動くことに抵抗はなくなり、Shall I?の提案もしやすくなりました。

Q 今回の地域活動の体験に満足していますか。それはなぜですか。

満足しています。
何よりも貴重な経験をさせていただき、4か月間でしたが、まさに「人生経験」といえるような刺激を毎回頂いていました。日常生活では決して関わることのなかった人々とたくさん出会えたことで、私自身と向き合うことができました。

衝撃的だったのは、仲良くなった留学生に「君の子どものころの思い出を聞かせて」といわれたときに何も思い浮かばなかったことです。新しい人と出会うことそのものが自分発見に繋がりますが、それに加えてこの質問によって改めて自分のことを考えるチャンスを提供してもらいました。また、地域活動を間近にみたことで、今まで学習していたことと結びつくような感覚があり、地域づくりに携わりたいという目標を再認識する機会にもなりました。今後も継続的に参加させていただきたいと思っています。

Q 今回の実習はボランティアとして行いました。このような活動を行うためには対価が必要ですか。必要であれば、どのような対価が得られれば他人に対してあなたの時間や労力を割いてもよいと思いますか。

ボランティア活動の対価は、経験させて頂いたことすべてだと思います。

特に今回は「してあげている」というよりも「させてもらっている」という感覚でした。綺麗事だと言われてしまうかもしれませんが、「他人のために自分の時間や労力を割く」というのは間違っていて、自分の意志を持ってそれに費やしているのだからあくまで「自分のため」に過ぎないのではないかなと思います。

普段出会えない人と出会い、話すことは貴重な刺激になります。とはいっても確かに今回は「単位」を対価であると捉えることもできるかもしれません。しかし私はこの「単位」が対価というよりもむしろ、動機づけやきっかけとして働きかけてくれたと考えています。新しいことを始めるに何かきっかけがないとなかなか踏み出せなかったり、やりたいと思っていてもどうしたらよいかわからなかったりする場合が多いと思います。そのため、ボランティアに必要なのは対価というよりもむしろきっかけではないでしょうか。

Q 地域活動での体験はこれからの大学での学びにどのように関連すると思いますか。また大学での学びは地域活動にどのように関連していますか。

私は生涯教育課程で社会教育の役割やまちづくりについて学んでいて、住民主体の地域活動はまさに私が学習の主軸においているテーマです。実際に地域活動を体験し、大事とされている「地域活動」とはどういう活動なのか、数多くある団体の一にしかすぎませんが、自分の目で見ることができ、住民のエネルギーに触れることができました。

同時に、高齢化の問題や市民団体の資金不足、世代交代の人材不足等、教科書に出てきた課題を目の当たりにしました。そのため、行政的な措置に対して、肯定的に書かれている文章でも批判的に見ることができるようになりました。また、理論的な構造や施策の枠組みを学ぶことで、その課題がどうして生まれたのかを考察しやすくなりました。この法律があるからこうした活動は制限されるというように本質的に自由な地域活動と行政的立法・施策の関係に目を向けることが非常に大事だとも思います。

Q 今後はどんなことに取り組んでいきたいと思いますか。

今後も今回お世話になったAIFSの活動に参加したいと思います。

今度は実習生としてではないので、もう少し批判的な視点を持って土気という地域を見つめていきたいです。また、参加する勇気が出なかった地元の地域活動にも参加してみようと考えています。

また、語学研修やグローバルボランティアにも挑戦したいと思っています。今回の地域において国際交流を実現する活動を通して、日本にいる外国人の方々と話し、自分が完全に寄り添えていないことに気が付きました。それは私が海外に滞在した経験がなく、その不安や不便さを感じたことがないというのが大きな要因であると考えます。また、多文化共生社会をめざし、外国人の支援や国際交流を実現するためには語学力も必要不可欠です。そのため、大学生のうちに海外での経験をなるべく多く積みたいと思っています。グローバルボランティアにも挑戦し、とにかく修行していくつもりです。その中でボランティアが盛んなカナダにも行く機会があれば、参加している人たちの意識を知り、日本の地域活動に地域の人々を巻き込むヒントを得られるのではないかと考えています。

このように地域の中に入ることと、海外へ進出することを両立し、グローカルな視点を養っていきたいと思います。

Q それでは最後に、来年度実習を行う後輩たちへ一言お願いします。

とにかく挑戦してください。