法経学部3年 服部桂子さん

派遣先:千葉市盲ろう者友の会

Q 活動に参加した団体について教えてください。

千葉盲ろう者友の会は、目と耳が不自由な人の生活を充実させるために活動しています。千葉、とついていますが、東京から一泊旅行に参加する方がいたり、新潟の盲ろう者の方と交流があったりと、地域を限定している印象は特に持ちませんでした。

友の会で交流会や勉強会など様々なイベントを企画し、そのイベントがある当日に、千葉市の研修を受けて免許を取得済みの介助員が、友の会に登録している盲ろう者の送り迎えからそのイベントの時間をサポートします。交流会の時間など活動の時間は、通訳者の交代をしながら介助します。送迎の担当は事前に決められているようです。私は免許を取っていないので、送迎など専門的なことは出来ませんでしたが、ボランティア実習生徒して出来ることをしました。

具体的な介助の内容としては、歩行介助や通訳介助、交流会のゲームのサポートから企画運営、後片付けなどです。専門の介助員は、手話や指点字を使って、通訳をします。

千葉盲ろう者友の会ホームページ>>

Q 実際にあなたが参加したのはどんな活動ですか。

交流会や一泊旅行の企画、運営、後片付け、ゲームの準備を手伝いました。また、盲ろう者の方が移動する時には、歩行介助をしました。
腕を掴んで貰って、ゆっくりと歩きます。一番はじめに歩行介助をしながら歩道を歩いているとき、盲ろう者の方に点字ブロックの上を歩いて貰おうとしましたが、介助員さんに「ブロックは白杖ででっぱりを確認しながら歩く人が多くて、その上を歩くとつまずく恐れがあり、危ないから避けて通ってね」と教えて頂いた日をよく覚えています。

また、不十分ながらに通訳介助もさせて頂きました。手話と指点字は一応!50音覚えましたが、通訳をするにはスピードと正確さが必要なので、手話での通訳は出来ませんでした。私は主に音声での通訳をしました。耳元でその盲ろう者の方に合う音量で状況を説明します。誰かが言ったことをそのまま繰り返すのは出来ますが、細かに状況を伝えるのは難しかったです。けれども盲ろう者の方に、「聞こえやすい」と言って頂いた時はとても嬉しかったです。

Q. 活動に参加する前に設定した目標について教えてください。地域活動に参加するにあたり、地域・人々にどんな貢献をしたいと考えましたか。また体験を通じて何を学び、どんな点で成長したいと考えましたか。

個人的に設定した、手話を覚えて一緒に話をする!という目標は、残念ながら達成出来ませんでした。けれども、実習最後の日には、指文字を使って会話をすることが出来ましたし、思ったことを伝えることもまあまあ出来たかなと思います。

手話を覚える、という部分は不十分になったけれども、一緒に話をする!という目標はある程度達成出来たかなと思います。話をして、楽しんで貰いたいと思っていたのですが、盲ろう者の方に楽しんで頂けたかどうかは不確かです(笑)けれども、少なくとも私にとってはとても楽しい時間でしたので、きっと楽しんで貰えたと思っています。笑顔もたくさん見ることが出来ました。

地域に貢献をする、という点では、盲ろう者のことをたくさんの人に知って貰うということを目標にしていました。友達によく活動の話をしましたし、この目標は私が将来的にこれから、必ず達成します。学んだことはコミュニケーションのあるべき姿です。手話が使えなくとも、もっと人の気持ちが分かる人間になりたいです。

Q それらの目標はどの程度達成できましたか。

総括して50%達成出来たと思います。手話を覚えるという個人的な目標も、たくさんの人に盲ろう者のことを知って貰ってよりよい社会を築いていきたいという目標も、まだまだこれからで、このボランティア実習はあくまできっかけに過ぎないと思うからです。

私のダメなとこともたくさん見えてきましたし、こうしたいと思う課題も自分に対して持つことが出来ました。その点では意味があると思います。これから先、自分で手話を覚えようとすることは出来ますし、就職してどんな職業に就いても、友の会、しいては盲ろう者の方に貢献することは出来ると思いますし、しようと思っています。その意味で自分に期待とプレッシャーをかけて、50%の達成率です!

Q 今回の地域活動体験の中で、最高だった体験/最低な体験をそれぞれ教えてください。また、その体験から何を学びましたか。

最高な体験は、優しい人にしか出会わなかったことです(笑)盲ろう者の方も、そして介助員の方も、心の優しい人しかいませんでした。活動に参加するたびに優しさを感じました。一泊旅行では、当然ですが盲ろう者のことを第一に考えて動いている介助員を見て、優しいなあとしみじみ思いました。食事をする時も食べやすいように手伝ったり、表情やしぐさに敏感に気付いたり、ほんとにすごいと思うことばかりでした。また実習生の身分の私にもとても優しくて、盲ろうの方だけでなく介助員の方のあたたかさが身に染みた時間でした。

最低な体験は、私の応答が遅かったことです。メールをこまめに確認しないがゆえに、勘違いを招いたり、困らせたりしてしまいました。盲ろう者の方にとってメールという手段がどれだけ大事かわかっていなかった私の不行き届きのために何度か手間をかけてしまいました。自分のずぼらな性格とあまりにもざっくばらんとしすぎている性格を認識して嫌になったと同時に直そうと思いました。

Q あなたの地域活動(ボランティア活動、NPO等の団体の存在意義)に対する理解を教えてください。それは実習前とどんな点が変わりましたじか。

実習前に「ボランティア活動」と聞くと、正直、自己満足の活動に過ぎないと思っていました。社会に対して何かしらの行動をすることで、やりがいを感じるためにあるのかなと思っていましたが、少なくとも友の会は違いました。介助員の方はみんなが楽しそうでした。もちろん大変そうだなあと感じることもたびたびありましたが、けれども長く続けている介助員さんや楽しそうな介助員さんを見ると、「ボランティアっていうけど、どっち側にとっても楽しい活動に過ぎないんじゃないかな」と思いました。ボランティア活動は、自分の都合で無理をせず、そして楽しみながら、長く続けていくことが大事だと思いました。

NPO法人という団体の存在意義についてですが、行政だけでは不十分な隙間を埋めていくためにあるのだろうなあと実感しました。行政だけでは多くの需要に満足いく対処が出来ませんが、個々が必要としていることに対してきちんと応えていくのがNPO法人であると感じました。

Q 実習を終えてあなた自身、何か変りましたか。

自分に対する評価が厳しくなったと思います。私は自分の欠点をあまり知らなかったと思います。連絡を滞らせてしまう雑な性格は、盲ろう者団体で活動をする上では本当に改めなければいけない点で、反省しています。自分に対して甘い部分がたくさんあって、厳しい視点を失っていたなと思います。時間に遅れたこともぎりぎりに到着することもあり、そういう点でもルーズな自分をきちんと律さなければ、これから先何事にも響くと思いました。

いい点でいうと、少し優しくなった気がします。世の中色んな人がいると感じて他者に対する理解を深めようとする気持ちが養われた気がします。具体的な行動でいうと、街中の点字ブロックの上に自転車を駐輪しないように気をつけるようになりました。また、白杖を持って歩いている人を見ると、大丈夫かなあと心配そうに見る癖がつきました。社会にいる盲ろう者は絶対数は少ないかもしれないけれど、私は社会の隅々まで見たいと強く感じるようになりました。

Q 今回の地域活動の体験に満足していますか。それはなぜですか。

満足しています!全く新しい経験をさせて貰い、さらに世界が広がったからです。

盲ろう者の方の生活、どんなことを考えているのか、どんな風に笑うのか、何に困っているのかを知ることが出来て、新しい友達が出来た気分です。指文字を使って会話をしたことはずっと忘れないと思います。私はボランティア実習生として派遣された身でしたが、この役半年間は楽しんだに過ぎない時間でした。目と耳が不自由な人、と聞いて抱く印象はマイナスなものではなくなりましたし、手話が使えなくても意思疎通が出来ることを知りました。当然ですが、同じ人間ですから、コミュニケーション手段よりもまずは気持ちが大事で、伝えたい気持ちと理解したい気持ちがあればどうにかなると思いました。

千葉に来て3年が経ちます。地元ではありませんが、千葉市というところで友の会に入らせて頂き、活動した時間はとてもあたたかいホームが出来たような気分にしてくれます。

今回の実習はボランティアとして行いました。このような活動を行うためには対価が必要ですか。必要であれば、どのような対価が得られれば他人に対してあなたの時間や労力を割いてもよいと思いますか。

難しい質問だと思います。見返りを求めないのが人間関係の基本であると思っています。けれども、例えば災害ボランティアだと、自分も幼い頃にお世話になった経験とか、いずれ私も何かの時に助けて貰いたいという希望とか、そのような自分本位な理由でボランティアに参加しても十分だと思います。

ボランティアというのはその活動を求めるという需要があるから成り立つものであるので、それならばなるべく多くの人がボランティアをすればいいと思います。そのために対価があっていいと思います。ちなみに友の会では介助員にお金が出ているらしいですが、その対価を目的としてボランティアをしている人がいるとは感じませんでした。きっと楽しさややりがいがあるからやっていると思いましたし、むしろ労力を提供する側は笑顔や感謝の言葉といった人間らしい対価を得ているのではないかなと思いました。私は楽しさと笑顔と充実感が欲しいです。

Q 地域活動での体験はこれからの大学での学びにどのように関連すると思いますか。また大学での学びは地域活動にどのように関連していますか。

私は行政や政治を勉強しているので、社会に対して考察を及ぼすときに、きっと盲ろう者の方を思い浮かべると思います。政策立案をする時に、例えば大多数の人の意見だけを重んじることがなく、包括的にバランスよく、弱い立場の人までもうまく頭に入れて、政策を立てようと努力すると思います。物事を考える際に使う、新たな視点が加わった感じです。

逆に大学での学びがこの地域活動に生きたとすると、単なる学問だけでは解決しえない課題を発見出来た気がします。机の上で学問だけを勉強していても、実際社会や地域に出てみると、勉強よりも大事なもの、つまり、生きることに直結する課題、よりよい生を送ることについて考える時間が必要だなあと思いました。いい意味で大学の学びの不十分な点が発見出来ました。

Q 今後どのようなことに取り組んでいきたいと思いますか。

進路が決まって落ち着いたら、また友の会で活動をしたいと思います。これからは手話を覚えたい!と思っています。これを機に、手話、指文字、指点字をしっかり覚えると、この世界の中で意思疎通が出来る人々が増えるということに喜びを感じると思います。

これから進路が決まっても、どのような形であれ、恩返しをしようと思います。周りの人に盲ろう者の存在とそこでの日々を教えるだけでも、知っている・理解している人を増やすという点では重要だと思っています。手話を使った職業や、盲ろう者に対して直接何かをする仕事ではなくても、友の会のため、また盲ろう者と心優しい介助員さんのため、また広く言えば社会のために出来ることをしっかり考えて見つけ、取り組んでいきたいと思います。

Q 来年度実習を行う後輩たちへ一言。

大学生活でまたひとつ、自分のスキルが増える授業です。とても素敵な時間を過ごせるはずなので、自分に厳しく!50時間を体験してください。