2018年6月、いすみ市大原商店街の一角に、千葉大学の拠点が完成しました。新たな人の交流を生み出す場として、大学生だけでなく地域の方にも、ぜひ活用頂けましたら幸いです。駅にも近く、明るくオープンな空間となっています。ワークショップや打ち合わせだけでなく、DIYの作業場などとしてもご利用頂けます。
現在日本では、新しい住まいや店舗などを作る際には、古い建物は一瞥もされずに壊されて、地域の文脈とは全く関係のない新建材や量産のための工法で建て替えられてしまいます。しかし、それこそが各地域を均質化させ、無価値化して崩壊させる根源の一つであり、一方で、地域を再生させる際にその誇りやアイデンティティを無視することはできません。ならば、この蔵の改修も使えるものは引き続き使い、また、新しいプロジェクトのための必要な新しさは、古いものや既存のものを最大限尊重して決定されるべきだろうと考えました。
地域での活動や交流に必要な開放性を作るために蔵の東西面を全てガラスの開口部とし、学生たちの作業への集中や地元の人々との適度な距離感のための緩衝材として、南北面の壁は既存のままに残すこととしています。開口部を作ることで弱くなった耐力は新しく鉄骨の骨組みを挿入することで補強し、庇の受けや出入り口のゲートとして既存建物に溶け込むように配慮しました。床面は基礎スラブをそのまま仕上げとしてあります。庇の下の砕石は古い瓦を砕いて再利用したもので、外装のトタンも年代はあまり古いものではないですが、海の町の人々がよくトタンを用いて倉庫などを作っている雰囲気を残すためにそのままにしています。
設計:kurosawa kawara-ten
撮影:千葉大学工学部建築学科4年 佐藤亮介