犬吠埼温泉の新価値創出
概要
銚子市の観光資源のひとつである犬吠埼温泉の価値を高める取り組みとして、千葉科学大学は銚子市および犬吠埼温泉協議会と連携し、科学的エビデンス取得を進めてきています。犬吠埼地区には、5軒の温泉宿泊施設が営業しており、3種類の源泉を活用し、利用客の好評を得ています。入浴後に肌がしっとりするなどの声はあったが、保湿効果は実証されていませんでした。そこで、実際に源泉の保湿効果を実証しました。また、源泉の成分分析を行い、海水とは異なる組成であること、年代測定の結果、少なくとも約1万年から2万年前の化石海水であることが判明しました。これらの知見に基づき、観光客のさらなる誘致など、地域経済の活性化に資する取り組みを行っています。
これまでの成果や今後の展望
(1)犬吠埼温泉の皮膚保湿効果の検証
犬吠埼温泉の3種類の源泉の肌に対する影響を調べるために、足湯に入浴する試験、および各源泉を腕に塗布する試験を行い、肌のうるおいの指標である角層水分量を専用計測機器により測定しました。それぞれ20名以上の被験者に協力いただき試験を実施し、いずれの試験においても犬吠埼温泉の入浴あるいは塗布により、対象に比較して角層水分量が高いという保湿効果に関する科学的知見を得ることができました。本知見については、千葉科学大学紀要 第10号 pp.15-22 (2017)に掲載されました。
(2)犬吠埼温泉の成分分析と年代測定
犬吠埼温泉の3種類の源泉の成分分析を行ったところ、海水に比較してカルシウムは多くマグネシウムは少なく、地中に閉じ込められた海水が長い年月を経て成分変化した可能性が示唆されました。そこで、3種類の源泉について、極めて微量に含まれる放射性同位元素の量を測定することにより、その年代推定を試みました。その結果、3種類の源泉により異なるものの、少なくとも約1万年から2万年前の化石海水であることが判明しました。すなわち、海に近い温泉であっても単に海水を加温しているのではなく、長い年月を経た産物であると推定されました。
(3)成果発信
上記の成果は、犬吠埼温泉研究結果発表会(平成28年5月24日、平成29年5月30日開催)にて公表しました。また、研究成果の一部は、千葉科学大学紀要 第10号 pp.15-22 (2017)に掲載されました。一方、これらの知見に基づき、犬吠埼温泉協議会では横断幕を作成し、銚子電鉄犬吠駅に掲げられて観光客へのアピールに貢献しています。
基本情報
カテゴリー
産業振興
プロジェクトを展開している自治体名
銚子市
関わっている研究室名、教員名、企業、団体など
千葉科学大学 薬学部 生命薬科学科 化粧品科学研究室 平尾哲二、山下裕司
千葉科学大学 危機管理学部 環境危機管理学科 手束研究室 手束聡子
犬吠埼温泉協議会
実施期間
平成27年4月~
プロジェクトに関連するホームページアドレス
プロジェクトに関する連絡先情報