空き公共施設活用(南房総市)
概要
プロジェクトの対象施設である南房総市の旧・観光案内所は、2006年に7町村が合併し南房総市が誕生する以前に白浜町の観光協会の事務所として使われていました。白浜町は、房総半島の最南端に位置しており海水浴客とともに野島崎灯台には多くの観光者で賑わいをみせていました。しかし、モータリゼーション等に伴い近年は観光客も減少するとともに、過疎高齢化により地域の若者は減少し地域のにぎわいが減少しつつあります。白浜町は南房総市の中でも最も高齢化が進行し衰退の恐れがある地区とされています。本プロジェクトの対象施設である旧・観光案内所も野島崎灯台のふもとに位置しており、当時は多くの観光客が集まる場所でした。
本プロジェクトでは、南房総市の旧・観光案内所を大学生により企業誘致に向けた新たな利活用の提案を行う事業として、千葉県主催による事業として実施されました。千葉工業大学は、創造工学部の建築都市環境学科とデザイン科学科及び社会システム科学部のプロジェクトマネジメント学科の計8人の学生が中心となり、学生の各々の専門分野を活かして提案をまとめ上げました。
南房総市は遊休公共施設を利活用しての企業誘致で既にいくつかの成果を見せはじめています。既に遊休公共施設の利活用に取り組む企業は、市の手厚いサポートを含めて、白浜地区の房総半島最南端の魅力的な自然のロケーションと東京から2時間という交通アクセスに魅力を感じ事業に取り組んでいます。そして、白浜地区には特にローカルイノベーションに対して積極的な企業が集まっています。
遊休公共施設の利活用の取り組みが成果を見始める中で、企業誘致に適した条件の良い遊休公共施設は限りがあります。このような、遊休公共施設等の遊休ストックの利活用を契機とした地域の変革の兆しは、促進していくべき反面で地方創生に伴う政府からの助成も限りがあるため、恒久的な地域活性化の方法にはなりえないことを課題として再認識しました。
これは、学生たちが白浜地区のお祭りにボランティアに参加する際に地元の方から言われた「こっちの空き店舗も使ってくれよ」の一言がきっかけとなりました。この一言も、学生たちがボランティアとうに携わることで地域の方から信頼感と期待感から得られた一言だと思われます。その他にも、遊休公共施設を利活用する企業は首都圏から新たなヒトの流れの創出は、これまでにない成果を見せる中で、地域との関係性の構築や、同じく企業誘致により地区内で事業に取り組む企業間での交流は未だ少ないことも、学生たちが企業などに対する詳細なヒアリング調査により明らかとしました。
以上の調査を通じて、学生たちは、地域の活性化やコミュニティの強化を図りながらも白浜地区内で遊休公共施設の利活用などを既に取り組んでいる外部の企業等の事業をいかに繋ぎ合わせ加速させることを提案の目的に定めました。そして、提案のコンセプトは「お試しの場を通じて地域から応援を得る」というレンタルスペースにインキュベーション機能と地域の互助機能を組み込むようなアイデアです。
施設の利用者は、レンタルスペースを利活用し自らがチャレンジしたい取り組みを行い、周辺の起業家の先輩からサポートを得ることでアイデアを高め、地域からの応援を得ることを通じて起業家としての自立や事業の成功を目指すという構図です。周辺企業は、教育事業やロールイノベーションに取り組む事業であるからこそ、自らの事業展開や地域活性化を図るためにパートナーと成り得る後輩の育成に協力できると考え、以上のような関係が成り立つと考えました。そして、地域からの応援の中でも空き家・空き店舗の仲介も図ることで遊休公共施設の利活用に留まらず、地区内の多くの空き店舗や空き家の利活用にも繋がっていくように仕掛けています。
提案のメインターゲットは、企業や地域貢献等に興味を持つ首都圏の大学生と定めることで、学生が地域や提案を自分事として感じより具体的な提案ができるように試みました。また、遊休公共施設を利活用するだけではなく、地区で遊休公共施設以上に持て余している空き家・空き店舗の利活用も見据えた提案となっています。
効率的で持続的な運営を実現するために、提案内容には地区内の具体的な企業を想定した今後の事業プランなども組み込むとともに、学生たちが地域でのチャレンジや課題解決を一過性な取り組みとしないための持続的な仕組みの提案も盛り込んでいます。
これまでの成果や今後の展望
プロジェクトの実施を通じて、白浜地区内で既に事業に取り組む外部企業や地元団体の方々の事業の目的・今後の狙いなどについて共有することができました。千葉工業大学は、教員個人の関係をはじめとして南房総市と共同研究やボランティア等により長年の関係を深めています。
特に白浜地区では、千葉工業大学デザイン科学科OBにより廃校となった旧・長尾小学校と旧・長尾幼稚園をレンタルオフィスと簡易別荘等としてリノベーションし利活用している新型コミュニティ施設であるシラハマ校舎の一室を他のプロジェクトによりサテライトキャンパスとして整備利活用に取り組んでいます。
今後は、シラハマ校舎のサテライトキャンパスと旧・観光案内所を一体的に利活用し周辺の遊休公共施設を利活用する企業や地元団体と連携し大学も地区の主体の一員となり地域活性化に取り組んでいきます。提案後には、旧観光案内所を利活用し、観光者に向けに地元で水揚げしたアワビやサザエ等の貝殻をアクセサリーや小物に加工するデザインワークショップを実施しました。
基本情報
カテゴリー
人材育成、産業振興、若者定着
プロジェクトを展開している自治体名
南房総市
関わっている研究室名、教員名、企業、団体など
創造工学部都市環境工学科鎌田研究室
創造工学部デザイン科学科大嶋研究室
社会システム科学部プロジェクトマネジメント学科加藤研究室
千葉工業大学附属研究所 青木和也(共同研究員)
千葉工業大学デザイン科学科 大嶋辰夫(准教授)
studio IrodorI建築設計事務所 一色博貴(博士後期課程・非常勤講師・千葉工業大学建築都市環境学科OB)
ちばぎん総合研究所
南房総市商工観光部商工課
千葉県商工労働部企業立地課
実施期間
平成29年4月〜
プロジェクトに関連するホームページアドレス
http://kamata-lab.com
https://www.pref.chiba.lg.jp/rich/akikoukyou-top.html
プロジェクトに関する連絡先情報
千葉工業大学鎌田研究室
担当者:青木和也(千葉工業大学附属研究所)
TEL:047-478-0489
e-mail:happu_kamata@yahoo.co.jp